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初期型のボーイング747「クラシック・ジャンボ」が、09年度で国内の航空会社から姿を消す。大阪万博が開催された70年に就航し、世界の距離を一気に縮めた航空史に残る名機だ。日本航空所有の10機のうち1機が12日まで最後の大規模整備中で、退役までのフライトの安全に向け作業が進められている。
747は70年1月、米航空会社で1号機が就航し、日本では日航が同7月に導入した。500人以上の輸送能力と、途中給油なしに世界の都市と直結できる航続距離の長さから、当時主力のDC8型機から主役の座を奪った。ジャンボジェットの愛称で親しまれ、前方が膨らむ流麗な機体は空港の華だ。
クラシック・ジャンボは747-300型までを指す。コックピットにはアナログ計器が並ぶため航空機関士が必要で、機長、副操縦士の3人で運航する。後継機の747-400型は電気信号で機体を制御し、複数の計器を液晶パネルで一括表示する「ハイテク・ジャンボ」だ。
69年に日航に入社した整備出身の佐藤信博・JAL航空機整備東京社長は当時、格納庫に頭しか入らない機体の大きさに圧倒された。多くの整備士が仕事のイロハを学んだという。73年の日本赤軍ハイジャック事件では、リビアで燃える映像に衝撃を受けたが「火の怖さを知り機内持ち込み禁止の徹底の必要性を感じた」と振り返る。
工東信朗・日航整備本部技術部副部長は「古い機体と思われがちだが、現在でも改良を続けている」と話す。多くの整備士が手をかけ、ケーブルの張り具合など耳や手の感覚を使う。「手間はかかるが電子制御機にはない分かりやすさがある」
現在、国内に残るクラシック機は日航の10機だけ。燃費の悪さが退役を加速させた。最後の大規模整備を見守る志戸譲・主席領収検査員は「85年の御巣鷹山墜落事故を思い身が引き締まる。退役の日までトラブルがないよう万全の状態に仕上げる」と話す。